リウマチの原因
リウマチの語源がギリシャ語の「流れ」であることはよく知られています。古代ギリシャでは、リウマチとは、有害な液体が脳から全身に流れ、関節などにたまって痛みを起こす病気であると考えられていました。この学説そのものは今日の医学的常識とはまったく異なりますが、イメージとしては後世まで影響を及ぼしました。日本リウマチ友の会の機関誌名『流』は、いうまでもなくこの語源に由来しています。リウマチの原因は「自己免疫疾患」と言われています。人間の体に悁わっている免疫システムは、異物が体のなかにはいってきたときに反応して体を守る働きをしていますが、このとき、異物に対しては攻撃を加えますが、自分の体には攻撃をしないというように、自己と非自己をきちんと区別しています。ところが、何かの拍子にこの免疫システムに狂いが生じると、自分の体まで攻撃するようになります。自分の体を構成している細胞やタンパク質を非自己と錯覚し、それに対して抗体をつくって抗原抗体反応を起こしてしまうのです。このように、免疫細胞が自分の体を攻撃することから生じる病気を、「自己免疫疾患」といいます。広い意味でのリウマチ(リウマチ性疾患)には、100種類以上の病気が含まれますが、このうち最も患者数が多く、治療が困難とされるのが「関節リウマチ」です。
私たちの身体のなかには、外部から侵入した細菌やウイルスなどを排除するシステム(=免疫)が備わっていますが、この免疫の働きがなんらかの理由で異常をきたし、自分の身体の組纈を攻撃してしまうことがあります。これが自己免疫疾患と呼ばれるものです。
その自己免疫疾患のなかで、細胞どうしをつないでいる結合組織が侵されて、全身に障害を引き起こす病気のことを膠原病(全身性結合組織病)といいます。膠原病は、難病の代名詞ともなっている病気ですが、そのグループの代表格が関節リウマチなのです。
リウマチの患者団体である「日本リウマチ友の会」の『2000年リウマチ白書』(会員のうち1万1000人を対象とした調査)によると、関節リウマチと診断された年齢は40歳代が25.8%と最も多く、次いで50歳代21.6%、30歳代20.9%、20歳代14.0%と続きます。
女性ホルモンがリウマチの原因?
その理由については、女性ホルモンと妊娠、出産の影響が指摘されています。
女性ホルモンのなかには、エストロゲンや乳腺刺激ホルモンといった自己免疫反応を高める働きをするものがあります。例えば関節リウマチにかかった女性が産後に授乳を続けると症状が悪化するのは、乳腺刺激ホルモンの影響によると考えられています。
また、妊娠期間に関節リウマチの症状が顏くなることがありますが、これは妊娠中には副腎皮質ステロイドホルモンの産生か増えて、免疫の働きが抑制されるためです。出産後にはその抑制が解除されるわけですが、その反動で一時的に免疫の働きが高まり、この時に自己免疫疾患が発症しやすくなります。リウマチは圧倒的に女性がかかりやすいことが知られています。このように女性に好発する病気は、ほかにはあまりありません。しかも、リウマチになるのは思春期を過ぎて女性らしくなってきたときからなのです。ただし、膠原病の病気の種類によって、性差やおこりやすい年齢に多少差があります。たとえば、全身性エリテマトーデス(SLE)が発症するのは20~40歳代です。これに対して、関節リウマチ(RA)はもう少し遅く、30~60歳代となっています。なぜ、膠原病は女性に多いのでしょうか?女性を女性らしく保っているのは女性ホルモンです。膠原病のなかでもSLEでは、女性ホルモンが原因ではないかと推測されています。まず、この病気は若い女性におこりやすく、しかも妊娠・出産をきっかけに悪化します。しかし、この病気になった人が年をとると、治療しやすくなります。